その時、私の人生が崩れていく爆音が聞こえた──チャイルドモデルだった美しい少女・夕子。彼女は、母の念願通り大手事務所に入り、ついにブレイクするのだが。夕子の栄光と失墜の果てを描く初の長編。
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黒羽: 綿矢りささん初めて読んだんですが、無駄なこと書かない感じの文章ですよね。
大石: へー! これがはじめてってちょっとはずれかも・・・
黒羽: まあそんな気はしてるw
大石: 無駄のなさとか具体的にどこらへん?
黒羽: 淡々とただ事実を述べてるというか、地の文に感情がないなーって思って読んでた。
大石: あー三人称で長編はたしかこれしかないんだよね
黒羽: そうなんですか!
大石: そう!だから私は逆に、 ごちゃごちゃいろんなこと書いてる印象だった.。その割りにゆーちゃんの人物像がかすんでるというか。 まあ「からっぽな女の子」なんだろうけど
黒羽: それはすごいわかる。 まあでも最初は常識的な女の子って感じもしたから、少しは共感もできたんだけど、 男と付き合いだしてから一気に意味わからんくなって、なんやねんこいつはーとなった。なんか典型的な悲劇の図でねえ。なんかね。
大石: 最初はけっこうよかったよね多摩とのからみとか。けっこう情緒あった
黒羽: 最後に多摩が救ってくれるんだと思ってたのに!笑
大石: ね! でもあそこで救わないのが綿矢りさ。 たぶん(笑)
黒羽: 夕子の父親と母親の関係っていうか、まず最初に夕子が生まれた経緯を書いたのはなんで?
大石: ね!ね!
黒羽: 両親の不仲が、思春期の女の子に与える影響はすごい大きいと思うんですが
大石:あのね、
蹴りたい背中→出てこないが特に不仲でもなさそう
インストール→離婚して片親、主人公は母親への反抗心あり
勝手にふるえてろ→出てこないが母親とは友達のように仲良し
ひらいて→登場シーンあり、親子として良い関係そう
うろ覚えだがこんな感じ
黒羽:綿矢さんは親子の確執とか愛憎を書きたいような人ではないんですね。 しょっちゅうそんなの書いてる作家さんもいるけど。
大石: そうなんだよ。だからなんでかなと。七竈に似てるなって思った
黒羽: 私は最初、いきなりお母さんの話だったので 「あーこれはお母さんの怒りとやらが娘さんを通して暴発する話なのでわ」などと予想していたのです
大石: わかる。 お母さんの恨みとかを娘が引き継ぐのではと
黒羽: しかしお母さんは、そういう面もまああるにはあったけど、最終的には最後まで信頼してあげてた娘に一方的に突き放される。かわいそう
大石: いいお母さんだったよね。 色んなもの失って。だけど父親は戻ってきたんだよね。でもそれももういらなくなってた
黒羽: ちょっとアレだけど、いいお母さんだったんだ。・・・ 父親と母親の関係が、「信頼の手が離れたらもう戻ってこない」ことの暗示だった?
大石: どっちがどっち。 父親がゆーちゃんで母親がファン達?
黒羽: どっちかというと、私的にはその逆かな。母親が「別れない」って思えば思うほどお父さんは別れたいって思うようなもん
大石: ?
黒羽: 父の浮気でお母さんはすごい憤慨するんだけど結局父は母から離れてしまって。
それを幼いころから夕子は見てるから、「一回離れたらもう戻ってこないんだな」って思ったかもしれない。 …つたわったかしら?
大石: 夕子は信頼の手って欲してたかなって
大石: ゆーちゃんはまさあきと付き合うことのほうが「自分の人生」って言ってるんだよ。
黒羽: 欲してたかどうかは抜きにして、「信頼」が大切なのは夫婦生活も一緒じゃない?
大石: 夫婦生活の信頼と一緒でいいのかな
黒羽: 一緒ではないけれど、それはそれ。
ただ、 信頼がなくなったら戻ってこない。
それを知ってしまってたから 夕子は別にスキャンダルをもみ消して復帰したいとは思わなかった。
大石: それこそ、それはそれ、じゃないかい?
黒羽: うーん
大石: だったら母が父に固執したのを夕子がまさあき相手に繰りかえしてる、 とかのほうが言えそう
黒羽: あー。景さんとは見てるとこが違うのかも。
大石: まあいつも違いますよね!
黒羽: だよねw
大石: 母親の話から始まるのは何故か、というはなしだったよね?
黒羽: そう。だから、夕子のその後の人生に関わってくる理由として、そう思ったの。 なにかの伏線ではあると思うんだけど。
大石: 私も伏線と言うか。 うん、両親の関係と夕子の人生の経緯を絡めて考えたい。 考えたいけど着地しないーー
黒羽: マサアキと父親は全く似てませんね。 父親はしょっちゅーなくけどマサアキは泣かないし。 そこが好きだと言ってるし。 夕子は父親のことは好きだけど、母親ほどに信頼はしていないね。
大石: 信頼はさておき。 夕子が最後に変に諦めてるのはこの両親のせいだと思ってる
黒羽: さっきからそれが言いたかったんです!
大石: つまり作者は親子関係を書くのは上手くないのかなって。 さっきちょっと言ったけど桜庭一樹とかはそういうのばっか書いてるイメージ
黒羽: 家族の話かくのうまくてそんな作品ばっかの人いますよね。まあ私はあんま好きじゃないんだけど、そういうの
大石: 村山由佳とか。 で、そうそう親子関係の話よ
黒羽: でも「夢を与える」では、親子の関係は重要な要素だと思うわけ
自分の夢を子供に託してがんばらせまくる母親って、ありがちですよね
大石: あるね
黒羽: で、子供も子供なりにがんばるんだけど、どこかでぷつっと切れて崩壊、みたいなのも。
大石: 少女マンガっぽいよね
黒羽: ありがちすぎて、ストーリーがテンプレすぎて、きもちわるいです。
大石: テンプレなんだけどやっぱ夕子が不思議
黒羽: でも作者はそれをすごく書きたかった、という印象が不思議。
大石: 両親→夕子はなんかいろいろどう死体の書かれてるけど、夕子→両親がつかみにくい
黒羽: どう死体w
大石: 死体ww 父親のことはまあわりとどうでもいいのかなって感じあるし、 結構それって現代っ子ぽいかなって思う。
文庫164P で沖島さんに対しての答えが不思議なんだよ。 「お母さんもいろいろ不安なんだと思う」ってかなり大人な発言してるかと思いきや「一人では決められない」とか。「母親のことなどあまり考えたことなかった」とか。
「友達母子」って一時期話題になったけどさ、ほんとうにそんな距離感でいられるわけないと思うんだよ。
それとも娘が自立してるとそうなれるのかな。 母親が自立してないのかなそういうのって
黒羽: うーん。ようするにお互いに依存してるんでしょ。
大石: そう纏める?!
黒羽: えっ。違うかな?
大石: いいけど!あっさりまとめすぎ!
黒羽: えー。
大石: わからんwww
もうね、分からん。これほんとよく分からん
黒羽: そんなに変かな?
大石: 中学生だと違和感あるなー
黒羽: まあ夕子は立場上どうしても早熟ですので・・・
大石: そのわりに結構いい年の後半ではかなり聞き分けないんだよね
黒羽: 夕子がお母さんに依存しなくなったんだよ。いきなり大人になったというか、いきなり反抗期がきたというか。 男ができたらそんなもんですかね?
大石: わからんww
黒羽:まあさ、夕子とお母さんの関係はマジかなり不思議なほどにうまくいきすぎだとは思うよ
大石: そうなんだよ。こんだけずっと近くにいたらもっともっとどろどろしたり、影響受けたり色々あるだろうと思うんだ
黒羽: お母さんも依存はしているけど、かなりしっかりしてる。
大石: 母親の変な話から始まったわりには、夕子はそれを引き継いでない気がするんだよね。
黒羽: うーんまあ子供の頃から見てたからね。
大石: そういうのあったら余計いろいろ思うことあるだろうに
黒羽: 別になりたくて女優?になったわけじゃないし
大石: だから「人間味がない」。流されてはいるよね
黒羽: ああ。だからそういう人間的な感情的な部分をぜんぶ母親が背負っちゃってるの?
大石: いいね。 人としては夕子は失敗作だよね
黒羽: でも母親も夕子がいるおかげでそういう気持ちの重たさをかなり軽減してると思う。 仕事に没頭できたり、いっしょに愛人宅へのりこめたり
大石: 逆に言えばそのせいで父親へ見切りをつけられなくなったよね
黒羽: 感情的な母親と、からっぽな夕子と、二人そろってぷらまいぜろ的な。 でも母と娘だから、父親に対する欲求は捨てきれないんだよな。父親もかわいそうだが、でもやっぱりクソ野郎ですね
大石: 父親と離婚してるか、父親が愛人を切るか、多摩君がいれば救われてたはずぅ
ああ、あとマサアキがちゃんと愛してたら
黒羽: 離婚って選択肢は母親的にはなかったんですよ
大石: ないね。夕子が生まれた時点でなかったね
黒羽: あったら夕子うまれてないよ
大石: 父親ほんとくそ。 こいつくそ
黒羽: マサアキもクソ
大石: うん
黒羽: 男ってほんとクソ
大石: 落ち着けwww
黒羽: 夕子はどうすれば不幸にならなかったのかな
大石: 多摩。まじこれ
黒羽: マサアキがなー。なんで唐突にマサアキに近づいたのかもよくわからん。マサアキのくだりからほんと理解不能。
大石: 短編でね
「亜美ちゃんは美人」っていう作品があるんだけど。 美人なんだけどろくでもない男と結婚する話。どっちが先かわからないけどこの夕子とマサアキの関係のプロトタイプっぽい
黒羽: へー。 この綿矢さんはろくでもない男をよく書くひとですか?
大石: そんなことないよ
黒羽: なんかこれ、ほんとクズ男ばっかり出てくるイメージなんだよ。 世界にはクズ男しかいないのかってくらい
大石: そう?
黒羽: 夢を与える、に多摩以外のいい男でてきた?
大石: いないねwwww
黒羽: 父親も沖島もマサアキもぜーんぶクズです
大石: トーマも沖島さんも
~(このあとしばらくクズ男トーク)~
黒羽: いますっごい脱線してる。
大石: そろそろお開きにしませんか
黒羽: こんどはクズ男について語ったら面白いと思います。
大石:楽しそうwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
黒羽: ねwwwwwwwwwwwww
というわけで③の読書会はこんな感じ。
今度はきっとクズ男が出てくる作品でやると思います。もちろん三月氏もやろうね!
わたくし黒羽自身の感想も、またいずれ別のところで書くかもしれません。
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