という本をつくりました。
こっくりさんにまつわるお話はこんな風に始まります。
*****
少女たちの声は鈴を転がすようだった。内緒話のさざ波は寄せては返し、またうち寄せた。
「こっくりさん、こっくりさん、どうぞおいでください。もしおいでになられましたら「はい」へお進みください」
少女たちは揃いの服を着て、唱和する。その光景はどこか儀式めいていた。
動いたらどうしようと思っていた。動いたら質問をしなくてはいけない。
けれど、10円玉を乗せた指はぴくりとも動かない。
少女はほっとした気持ち半分残念な気持ち半分だった。
こっくりさんにきいてみたいことはあった。だけど、その答えは知りたいけれど知りたくないことだった。
「なあんだ、やっぱりイカサマなんじゃない」
少女たちは笑いながらそ の紙をゴミ箱に捨てた。
学校を出て、彼女たちは何が楽しいのかきゃらきゃらと笑った。
ブレザーの少女たちの集団は、セーラー服の一人の少女とすれ違う。
セーラー服の少女は、少女の集団が「こっくりさん」という言葉を口にするのを耳にした。
こっくりさん、なんだったっけ? そんなことを考えながら彼女が歩いていると目の前に電信柱が現れる。
電信柱には乱暴に貼り付けられた白い紙があった。
少女はそれを手に取る。
「○月×日 こっくりさんをやります。参加される者は集合されたし」
そんな文言と一緒に簡単な地図が添えられていた。
その紙を見て、少女の頭の中には一人の顔が思い浮かんだ。窓辺でアンニュイな表情を浮かべるあの子に、この紙 を渡してみよう。
少女は胸を躍らせて家路を急ごうとした。そのとき、風が紙をさらった。
4つに折られたその紙はすぐに落下して地面を走っていく。セーラー服の少女が紙を追いかけていくと、目の前には犬を連れた少女が現れた。
犬を連れた少女はその紙を拾い上げるとセーラー服の少女に手渡した。
「はい」
「ありがとうございました、大事な紙なんです」
「それは良かったです」
犬を連れた少女は微笑んですぐにその場を去っていった。
セーラー服の少女も今度こそ家路を急いだ。
こっくりさん、こっくりさん。
どうぞ、おいでください。
どこかでそんな声がした。
PR